あなたは今、自分の労働時間に満足していますか?
独立行政法人経済産業研究所の調査によると、
労働時間に「満足している」「どちらかといえば満足している」
と答えた日本人は、男性37.9%、女性47.1%です。
私たち教員は「ブラック」と称されることもあり、労働時間に満足している人は特に少ないでしょう。
しかし、ドイツは違います。
2018年にドイツの連邦統計局が発表した調査によると、
ドイツ人就業者のうち90.7%が、「現在の労働時間に満足している」
と回答しています。
日本もドイツも「先進国」という枠組みでは同じはずなのに、なぜここまで大きな差が生まれているのでしょうか。
今回は、キューリング恵美子さんが書かれた
『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』
から、なぜドイツ人が労働時間に満足できているのかを学び、そこから私たち教員が豊かに働くために、取り入れられることは何かを考えていきたいと思います。
この記事は、こんな人に読んでほしいです。
- 効率よく仕事がしたい。
- 豊かに働ける考え方を知りたい。
ぜひ、最後まで読んでください。
データで見るドイツ人の姿
労働時間に満足しているドイツ人
先ほども述べたように、ドイツ人の労働時間に対する満足度は非常に高く、
90.7%もの就業者が「現在の労働時間に満足している」と答えています。
一方日本人は、男性37.9%、女性47.1%しか、労働時間に「満足している」「どちらかといえば満足している」と答えていません。
日本人とドイツ人を比べると、ドイツ人は圧倒的に労働時間に満足していると言えます。
年間44日も、日本人より働いていないドイツ人
ドイツ人は、なぜそんなにも労働時間に満足しているのでしょうか。
それは、労働時間の少なさにあると言えます。
OECD(経済協力機構)のデータ(2017年)によると、
日本人の年間総労働時間は1710時間、ドイツ人は1356時間です。
日本 | 1710時間 |
ドイツ | 1356時間 |
1日の労働時間を8時間とすると、日本人は年間で44日も、ドイツ人より多く働いていることになります。
労働生産性が日本の1.5倍あるドイツ人
そんな労働時間の少ないドイツ人と比べて
「日本人の方が多く働き、たくさん生産している」「日本人は勤勉だ」
と思うかもしれませんが、残念ながらそうではありません。
労働生産性(1人が1時間に生み出すGDP)を比較したデータでは、
日本人は47.5ドル、ドイツ人は69.8ドルとなっています。
日本人 | 47.5ドル(約5225円) |
ドイツ人 | 69.8ドル(約7678円) |
単純に数値を比較すると、ドイツは日本の約1.5倍の生産性があるのです。
これらのデータから、ドイツ人がいかに効率よく働き、満足のいく生活を送っているかがわかります。
教員もマネできる考え方
では、実際に私たち教員がマネできそうなことは、どんなことでしょうか。
ドイツ人の考え方と、それをヒントに私が考えたことをまとめます。
忙しいくしている=仕事ができない、遅い
「いつも忙しくて大変ですね」と言われたら、どう思いますか?
私たち日本人は、「自分の労をねぎらってくれている」と受け取ることが多いでしょう。
しかし、ドイツでは違います。
ドイツでは「仕事ができていないと指摘されている」と受け取るのです。
ドイツ人にとって、「忙しくしている」は「頑張っている」ではありません。
「忙しくしている」ということは、「自分の仕事ができていない」という意味になります。
ましてや「残業」などは、「忙しい」の最たるものです。
残業をしている人は、「就業時間内に仕事をこなすことができない、能力の低い社員」とみなされます。
日本では、たくさん仕事を抱え、たくさん働いている人が「できる人」と思われることもありますが、それは間違っているのです。
- 「忙しい」は仕事ができない証拠。
- 仕事ができる人は、勤務時間内に仕事を終わらせる。
- たとえ上司の指示でも、勤務時間内にできない仕事は断る。翌日以降にまわす。
教員の仕事は本当に多岐に渡ります。そして、やった方がいい仕事は山ほどあります。
しかし、その全てに力を注いでいては、豊かに働くことなどできません。
- 優先順位をつけて、仕事を選ぶ。
- 勤務時間内に終えられないものは、勇気をもってやめる。
など、工夫する必要があります。

休むために働いている
コロナ禍になる前の2018年12月のエクスペディア・ジャパンの調査によると、日本の有給休暇取得率はたった50パーセントで、調査した19か国のうち最下位でした。ドイツは100パーセントです。
ドイツ人に「何のために働いているのか?」と質問すると
「休暇のため」と答えるそうです。
日本人に質問したら、「生活のため」という答えが返ってきそうですよね。
同じお金を稼ぐ行為でも、日本とドイツでは考え方が違います。
また、休暇の使い方についても、日本人とドイツ人は大きく違います。
世界の海外旅行者数ランキングでは、ドイツは中国に次いで2位です。
人口比で見ると、中国よりドイツの方が旅行者が多いのです。
私自身、ドイツへのホームステイ経験がありますが、
ホストファミリーは、毎年1ヶ月ほど休みをとって、バカンスで外国に出かけると言っていました。
島国である日本とは、環境が違うかもしれませんが
それでも、毎年海外旅行に出かけたり、毎年バカンスを楽しむことができる日本人など、ほとんどいないのではないでしょうか。
私たち日本人は勤勉です。それは非常に良いことですが、休まずに働くことが美徳とされる社会は、海外から見ると、違和感があるのかもしれません。
- 有給休暇は必ず取得すべきもの。
- 仕事は、「休むため」にするもの。
「人手不足」は会社の問題。個人が悩むものではない。
会社(学校)を休めない(休まない)理由としてあげられるものに、「人手不足など仕事の都合上難しい」というものがあります。日本人は「休暇の取得に罪悪感がある」と答える人が58%もおり、調査の中ではトップです。
実際に学校で勤務していると
- 休んだら、授業ができない。
- 朝の会や給食指導はどうするのか。
- 他の先生に迷惑がかかる。
といった理由から、生徒が登校する日に休むことに、後ろめたさを感じる人が多くいます。
しかし、ドイツ人は仮に、「休暇を取得したいけれど、会社が人手不足だな」と思ったとしても、それは会社が考える問題であって、個人が悩むものではないと考えます。ましてや自分が休暇を取ることに「罪悪感」を抱く意味すらわからないそうです。
学校という場所は、一般的な会社よりも特殊な環境だとは思いますが、こういった考え方をもつことで、休みをとることができるのではないでしょうか。
- 人手不足は会社の問題。個人が考えることではない。
- 自分が休んだくらいで回らない職場は、職場に問題がある。
- 休むことに罪悪感は必要ない。休むことは当然の権利。
実際、体調が悪くて教員が休むことがあっても、学校は機能しています。
私自身、「平日の方が空いている」という理由で、有給休暇を取得して旅行に出かけたことが何度もありますが、それで学校に迷惑がかかったと考えることはありません。
- 常に自習プリントを用意し、誰でも授業(自習監督)ができるようにしておく。
- 日頃から、教員(担任)がいなくても大丈夫な学級経営をしておく。
- 自分の分掌に関わる書類やデータの保存場所を明確にしておく。
こういった考え方と工夫さえあれば、休むことに罪悪感など感じる必要はありません。
まとめ
今回は、キューリング恵美子さんが書かれた
『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』から、
ドイツ人の考え方や、そこから教員がマネできそうな内容をまとめました。
- 忙しくしていることは、仕事ができない証拠。
- 休むために働く。
- 「人手不足」は会社の問題。個人が悩むことではない。
「ドイツと日本」、そして「学校という特殊な職場」という違いから、全てを同じように考えることはできません。
しかしながら、今回まとめた内容は、個人の努力で変えられる部分です。
この記事を読んでくださった方から、こういった考え方が少しずつ広がり
教員の働き方がよりよく、豊かなものになっていくことを願っています。
なお、今回参考にさせていただいた本『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』には、もっと多くの情報が載せられています。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
これからも、豊かな教員生活を目指して、学んで行動していきます。