学級担任をしていると、クラスのみんなで何かを決めることが多くあります。
そして、みんなで納得できるように、「多数決」を使うことが多いですよね。
しかし、みんなで納得して決めたはずのことでも、後から
- 「本当は、○○がよかった。」
- 「僕が選んだわけじゃない。」
などと文句を言われた経験がある人も多いのではないでしょうか。
せっかくみんなで決めたのに、揉め事のきっかけになってしまったり、生徒のやる気を損なう結果になってしまったりすることは、残念でなりません。
そんなトラブルを回避するために、今回は「ボルダルール」という決め方について紹介します。
- 多数決に疑問を感じている。
- みんながより納得できる決め方を知りたい。
- 「ボルダルール」って聞いたことはあるけど、よくわからない。
「みんなで何かを決める=多数決」というイメージがありますが、実はそうではありません。
多数決以外にも、有効な決め方があるのです。
ボルダルールとは
「ボルダルール」とは、18世紀後半に、フランス海軍の科学者「ジャン=シャアルル・ド・ボルダ」が考案した、選挙方式です。
投票者が、全ての候補者に対して、よいと思う順に高い点数をつけ、総得点が高い順番に、順位をつけます。
ボルダルールの特徴は、なんと言っても、投票者が2位以下も選択できることです。
多数決とボルダルールを比べてみよう
ボルダルールの魅力は、多数決と比較することで明確になります。
学校でありそうな場面を例に考えてみましょう。
- 選択肢は3つある。(ダンス・クレープ屋・空き缶アート)
- 出し物は1つしか選べない。
- クラスには36人いる。
多数決で決めた場合
多数決では、投票者がそれぞれ「1位」だと思ったものに投票します。
16人 | 12人 | 8人 | |
選んだもの | ダンス | クレープ屋 | 空き缶アート |
上記のような投票の場合、1番人数の多い「ダンス」が、クラス全員で決めたものとして、認められます。
後述する「ボルダルール」との比較として考えるならば
多数決の場合、1位に100点、2位以下に0点というような配点になります。
ボルダルールで決めた場合
ボルダルールの場合は、1位以外にも順位をつけ、それに応じて点数をつけます。
今回は、以下のように点数を設定します。
- 1位・・・3点
- 2位・・・2点
- 3位・・・1点
そして、以下のような投票結果になったとします。
※36人それぞれが1位に選んだものは、多数決の時と同じです。
16人 | 12人 | 8人 | |
1位 | ダンス | クレープ屋 | 空き缶アート |
2位 | 空き缶アート | 空き缶アート | クレープ屋 |
3位 | クレープ屋 | ダンス | ダンス |
(16人が1位にダンス、2位に空き缶アート、3位にクレープ屋を選んだという設定です。)
これを、今回の配点に合わせて、計算します。
1位(3点) | 2位(2点) | 3位(1点) | 合計得点 | |
ダンス | 48点(16人) | 0点(0人) | 20点(20人) | 68点 |
クレープ屋 | 36点(12人) | 16点(8人) | 16点(16人) | 68点 |
空き缶アート | 24点(8人) | 56点(28人) | 0点(0人) | 80点 |
そうすると、合計得点で「空き缶アート」が1位となり、クラス全員で決めたものとして、認められます。
比べて気づくこと
多数決の場合、16人の意見しか反映されていない。
多数決で決めた場合、1位のダンスを選んだ16人の意見しか反映されません。
つまり、それ以外を選んだ20人の意見が無視されていることになります。
これで、「クラスのみんなで決めた」と言えるのでしょうか。
※ダンスが過半数の支持を集めていないので、
「ダンス」と「クレープ屋」で、決選投票をする方法もあります。
多数決で1位のダンスは、実は1番人気がない。
多数決で「ダンス」と決まると、「みんなダンスがやりたい」ように思われますが、実はそうではありません。
先ほどの表をみると、ダンスを3位(1番嫌だ)に選んでいる人が、20人もいます。
半分以上の人が「1番嫌だ」と思っているものが、選ばれるなんて
そんなに悲しいことはありません。
ボルダルールで選ぶものは、みんなが「納得」できるもの
今回、ボルダルールで選ばれた「空き缶アート」は
28人もの人が「2位」に選んでいます。
2位ということは、悪く言っても「嫌じゃない」レベルです。
また、空き缶アートを3位(1番嫌だ)に選んだ人はいません。
ボルダルールで決まった「空き缶アート」は
多くの生徒にとって「1番やりたい」ものではないかもしれませんが
1番納得できる結果なのではないでしょうか。
まとめ
今回は、多数決に替わるボルダルールという決め方を紹介しました。
- より多くの意見を反映できる。
- 多くの人にとって、「よりよい選択」ができる。
学校では、生徒全員で何かを決めることが多くありますが、そのほとんどの場面で「多数決」を採用しています。昔から、複数の意見がある時は「多数決」で決めることが染みついているからです。
しかし、今回例に挙げたように、多数決よりもボルダルールの方が優れている点が多くあります。
「みんなで何かを決める=多数決」ではなく、その場面に応じて
どんな決め方がいいのか、考えることが必要です。
生徒にボルダルールを紹介して、
生徒自身が、「多数決」か「ボルダルール」かを決めてもいいのではないでしょうか。
もちろん、それ以外の決め方を考える機会があってもいいかもしれません。
今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました。
この内容が、少しでも豊かな教員生活、豊かな教育に役立つことを願っています。